あの美しい海でしあわせなまま死にたかった

 

 

 

 

 

 

 

冬の美しい海だった。

白い丸い石がたくさんあって、ふたりでそれを海に投げて、ぼうっとするだけの時間だった。

人は全然いなかったのに、なぜか結婚式の写真を撮っているカップルがいた。ウエディングドレスで。

寒そうだったけどしあわせそうで、わたしはあんな風になれないなと思った。

 

だってその瞬間だけがしあわせだったから。

しあわせなまま死にたかった。あのまま死ねたらよかった。

 

あのあとわたしたちは何度も喧嘩して別れて、でもまだ連絡を取っている。

互いに「死にたいね」「死なないで」って言いながら、あの海に帰りたいと泣いている。

 

きっとこれからもずっと引きずる思い出。

美しすぎるしあわせ。

ふしあわせなふたりで手を繋いでいたあの、